デイヴィッドとゴライアス/スティーブ・ヒンディ「クラフトビール革命」
昔、映画「スターウォーズ」を解説する何かの雑誌記事で、帝国軍と反乱軍を完全に取り違えて、ルーク・スカイウォーカーを帝国軍、ダース・ヴェイダーを反乱軍と書いているのを読んだことがあるんですよ。
ああ、日本人、というのは、権力とか権威、あるいは安定というものと、自由や解放に対する態度が、アメリカ人とは正反対なのだなあ、と。
というわけで、ブルックリン・ブルワリー創業者で、元ジャーナリストのスティーブ・ヒンディの手による「クラフトビール革命」、最初の100ページくらいを読みました。
クラフトビール革命 地域を変えたアメリカの小さな地ビール起業
- 作者: スティーブ・ヒンディ,木内敏之(木内酒造合資会社取締役),小野英作,和田侑子
- 出版社/メーカー: DU BOOKS
- 発売日: 2015/07/03
- メディア: 単行本
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まだ、アメリカ・クラフトビール・シーンの勃興についての話から出ませんが、1960年代のヒッピーカルチャーを受けて、70年代の西海岸には、インディ・スピリットが強くあったんだなー、と思う訳で、たぶん、そのあたりは、アップルをはじめとするシリコンバレー企業にも共通するマインドなのではないか、と思う次第。
実際、本書中でも、しばしば、ダビデとゴリアテ、という記述が散見。
もちろん、スティーヴン・キングの小説や、ティム・バートンの映画で、しばしば、周囲に誤解されるアウトサイダーが主人公になる辺り、アメリカ人にとっても、安定を求める勢力というのは、一定数いるのだと思います。資本主義の原理にならって、大規模な方が効率的、という現実も当然、あり。
ただ、ピルグリム・ファザーズや、対英独立戦争をはじめ、自分たちのオリジンとして、大きなものに対抗する独立心旺盛な人を支援し、賞賛し、あるいは憧れ、敬う空気、みたいなものはあるんだろうな、と。
日本人には、しばしば、自分たちを「サムライ」と形容したがる人がいますが、サムライとインディ・スピリットほど、遠い価値観もないよねー、とか思う訳ですよ。
そもそものサムライの語源、「さぶらひ」は、貴族の近くに控える従者、という意味だし。また、現代的な意味でのサムライのイメージを形作ったのは、世襲制公務員であった江戸時代の行政職員としてのサムライであり、そこには、清の台頭により没落した明から亡命してきた儒学者たちがもたらした階級統治思想が脈々と流れている訳でありまして。
まだ4分の1くらいしか読んでいませんが、ここまで感想として、ビールに興味がない人でも、中小規模事業の経営に関する本として、幅広い人にアピールするのではないか、と思います。もともと、自分がクラフトビールに興味を持ったキッカケは、市役所の産業振興部門勤務時代に、中小企業の生き残り戦略として知ったことですし。
もちろん、チャーリー・パパジアン、マイケル・ジャクソン、スティーヴ・グロスマンとか、名前も聞いたことないって人には、ちょっと事実関係の整理とかが難しいかもしれませんが。