aemdeko

日々の仕事に必要な調べ物の結果や個人的見解を備忘録的に書いておくと他の人に役立つこともあるかも、くらいのノリで。対象範囲は人口構造、社会保障費、都市計画、行政運営、地方自治あたりになろうかと。

市役所を変えていくということ

f:id:mordred77:20150318070236j:plain

 こないだのエントリを書いた後、その足で、そもそも自分を市役所の試験を受けるように勧めてくれた人のところに会いに行ってきた。

 自分としては、「おう、そうだろうそうだろう、そろそろ、そう言うころだと思ってた」くらいで返される、と思っていたら、「そうだからこそ、お前が市役所にいるべきなんだろう」と全力で否定されてしまい…。

 こちらは反対されるとも思ってなかったので、反論への反論もたいして準備していなかったので、「はあ、そうですか」とあっさり説得されて、帰ってきた。あっさりと言っても、都合4時間以上、話をしてきたけど。

 

 一応、その人に言われた主な話は次のとおり(この順番に言われたって意味じゃなく、4時間の中で同じテーマが何回も繰り返されたのだけど、論理的に整理しやすい順に再構成しています。向こうに一方的に諭されてるだけじゃなく、こちらの意見に向こうが同意して、さらに深掘りしてくれたような話も全て向こうからの話として構成しています)。

 

・民間企業でも、主流派に新しいことはできない (←なるほど)

・既存の価値観に染まっていると、過去を肯定するしかできないからだ (←同意)

・しかし、新しいことを起こさないと組織は停滞する (←同意)

・たとえば、うちの会社は○○屋だったが、○○なんてもう売れません、そんなのヤメて、これからは××を売りましょう、と言ったのは中途で採用した人間だ (←なるほど)

 ・今まで会社でやってきた連中は、「うちは○○屋だぞ、止めてどうする」と思う (←なるほど)

・しかし、○○の市場は縮退しているのは明らかで、そこにこだわったら会社自体の存続ができなかった (←なるほど)

・新しいことをやるのは、途中で入ってきた人間だったり、女性や変わり者とかの組織の傍流にいる人間だ (←なるほど)

・新しいことは主流派には理解されない。妨害すらされる (←なるほど)

・それを守るのは、トップの仕事だ (←なるほど)

・あいつらは俺が認めてやらせてるのだから、外野がぐだぐだ言うな、あいつの意見は俺の意見だ、と黙らせる必要が社長にはある (←なるほど)

・もちろん、新しいことは全てが上手くいくはずがない。失敗するものの方が多い (←同意)

・それでも任せることができるか (←同意)

・中には、変わった人間を育てようとしても芽が出ない、悪い芽になることもある。それは摘む必要がある (←なるほど)

・市役所の場合は、中々、途中で辞めさせることはできないが (←同意)

・だが、君はまだそこまで悪くないのじゃないのか (←だといいのですが…)

 

・しかし、市役所の人間というのは自分で考える、ということを知らない (←同意)

・上から言われたことだけしていればいいと思っている (←同意)

・それも、ある意味で仕方がないことで、市の職員は民意を背負っていない (←同意)

・民意を背負っているのは、市長一人だから、その指示を待つ (←同意)

・議会も失敗ばかりをあげつらって、よいことを褒めない (←同意)

・大過なく過ごせば年齢とともに昇進できて、成功するかどうか分からない事業に挑戦しても評価されず、失敗すれば非難される (←同意)

・それでは、新しいことを自分で考えてしようなどとは誰も思わない (←同意)

 

・確かに、市役所の仕事の8割か9割は、安定性が必要な仕事だ (←同意)

・しかし、1割か2割は新しいことをしていく必要がある (←なるほど)

・その1割か2割の仕事をするのだから、君はマイノリティなんだ (←そーですか…)

・市役所の主流派、幹部職員は特に新しいことに否定的だ (←同意)

・それはヘンなヤツが偶然、市長になってしまったときに、市役所をかき回されないために必要なことだ (←同意)

・彼らはある意味で職務に忠実と言える (←同意)

・だが、それでも新しいことを起こしていく必要がある (←それ、俺の仕事ですか…)

 

・新しいことを幹部職員に諮れば、それは否定される (←同意)

・それならば、直接、市長に諮ればよい (←そうですか…)

・市長の同意を得ています、と進めればよい (←そうですけど…)

・もちろん、そんなことをしていると、勝手に話を進められた彼らは面白くない (←だからさ…)

・ますます邪魔をしようとするだろう (←ですので…)

・そこで君らを守るかどうかは市長の仕事だ (←そうですか…)

・君の提案が正しくても、幹部職員に諮ったらつぶされる。それでよいのか。正しいことを実現するのが、市役所のため、市民のためではないのか (←そうですけど…)

・だったら、手段を選んでる場合ではないのではないか (←そうですけど…)

 

  というような話をしてきて、印象的だったのは、以下の3点ですかね。

 

1) 市役所での新規事業のありかた

2) 市役所での自分のポジション

3) まちにおける市役所のありかた

 

 1については、今の部署に異動してきて、まず思ったのが、「人事権も予算編成権も事業の決裁権もなく、人員もいないのに、何をしろって言うの?」という話。

 前職の産業振興部門では、業界団体や外部の支援機関があったので、市役所が動かなくても彼らを説得すれば、予算も人員も気にせず、事業を立ち上げることができたし、そのうちの1つの団体は事実上の事務局も兼ねていたので、それほど大がかりな事業じゃなければ、まあ、動かせた。

 あるいは市役所内部の調整が必要なことも、他部署との横の連携はほとんど必要なかった上に、比較的、上司が市長まで上げてくれるか、もしくは業界の声として直接、市長に上げることができた。

 ただ、なるべく業界の動きとして上げていたのは、市役所内で直接、上に上げることの危険性があって、「あいつは市長に気に入られてるから許される」みたいな個人的、属人的な仕事だと批判を免れないし、組織的な動きにはマイナスになることもある。

 そこは、組織として確立する必要がある、と思う。

 うちらの仕事を本気でやるなら、うちらに権威と権限を公式に与える必要があるんだろう、とは前々から思ってた。

 

 もちろん、上の話にも出てきたとおり、権威と権限を与えて失敗したときのリスク回避として、それらの人間を取り除ける仕組みは必要だし、たとえば任期付きの職にするか、成績評価による異動とかを制度化する必要があるのだと思う。

 

 この辺りまでは、この2年ずっと考えていたことで、むしろ、この日の話で、大きな気づきは、多分、公式な職位にしても、主流派からは疎まれ、妨害されるんだなー、と(笑)。

 

 2番目については、今の市長と、この人と、自分との3人の間で、市役所内での自分の立ち位置をどう見るか、というのが結構、違っていて、中々、気付かされるところがあった。

 自分では、前回も書いたように、自分の仕事の仕方こそが、これからの市役所に真に必要とされるスキルで、至って王道を歩んでいる、と思っている。特に、うちの街のアイデンティティを考えたら、市役所職員と言えども、こうあるべきだ。

 一方、今の市長と時々、話すときに説教臭く言われてきたことは、自分の能力を市長には認めてもらいつつも、自分が傍流でいつづけてるのは、「主流派に認めさせる努力がお前は足りない」、という話だった。この態度には、いつも、すごく不満があって、「あいつらなどアホだし、一生、俺の価値を理解できないし、理解させるために、へりくだる気もない。なぜなら、こちらは徹頭徹尾、論理的に正しい主張をしており、それを感情論で反対しているあいつらがバカなだけだからだ」と、ずっと思っていた。

 で、この人と自分とでは、「市役所の主流派には永久に理解されない(仕事を真面目に取り組めば取り組むほど)」という点で、意見が一致したのだけれど、「それでも、お前は(正道ではなく)マイノリティで、マイノリティであることに価値がある」、という視点は、中々、斬新だった。

 

 3番目については、この2番目の視点とも関連するのだけれど、市役所の主流派になれないのであれば、市役所に残る必要はなく、市役所の外から発信すればよいのでは、という前回の内容について。

 誤算だったのは、この人は自分を市役所に誘った張本人であり、今も春の地方選挙に向けて動いている最中の人で、やはり地方政治というものを、ある程度、重く見ていて、市場の力とはまた別の必要性を感じている人だった、という点です。

 それは、世代的なこともあるのかもしれない。

 ある地元の有力女性で、前の部署では顔と名前は知っているけれど、あまり絡むことがなかった人がいて、今の部署に来てから色々と気にかけていただいているのだけれど、その人と話したときにも、少し違和感があった。これだけ社会が豊かになり、人が選択肢を持った社会では、従来の民主主義は機能しないのではないか。

 21世紀の日本では、それほど行政の力など必要ないのではないか。

 この点については、もう少し自分の中でも精緻に理論を組み立てて、この人たちにぶつけてみる必要があると思った。

 

 なお、今日、その有力女性が職場に顔を出された帰り際、「聞いたよ。あんまり心配させんなよ」と言って行かれた。もう話、伝わってるのか。早いな!