レタスの川上村の件については、外国人労働者問題と「いわゆる成功事例」をどう見るか、という2つの論点があると思う。
群馬県だか長野県のレタス栽培で名を馳せた川上村で、外国人実習生制度を使って、奴隷同然の搾取が行われていた、という報道。
ネットで拡散したのは、J-Castのこの記事なんだけど、まあ、例によって、J-Castって論調、ではあるので、こちらの信濃毎日新聞の記事も参照されたい。
川上の外国人実習生 入管、受け入れ停止処分 組合解散決定|信濃毎日新聞[信毎web]
外国人実習生制度については、まあ、実質どこでも、だいたい低廉な労働力として使ってるよね。身も蓋もない言い方をしてしまえば。
うちの市内では、中国で生産拠点を持っている企業が、現地の管理職養成のために、国内で実習をさせて、現地に戻す、という使い方をしている例もある。彼らは中国に帰ればエリートになるんだろう。そして、多分、その会社もこの制度を使っていた気がするのだけど、それにしたって、そもそもが廉価な労働力を求めて中国に進出しているのだから、根本的な構図は変わってない。
これから日本国内の生産年齢人口が減っていったときに、海外の移民を受け入れるべきか、海外に生産拠点を移すべきか、という問題だと思う。
※ちなみに川上村も、ベトナムとかで川上村方式のレタスを現地生産している、とかいう話も聞いたことはあるので、それは実習が実を結んだ人なんじゃないか、と思うのだけど。
個人的には、日本語や日本の文化をあまり理解していない、特にアジアの人たちは、やっぱり会うと違和感をぬぐいきれないし、差別的・侮蔑的な態度を取るアホは、どうしたって出てくると思う。
外国人労働者問題については、菅原琢さんが紹介していた、このAmazonのレビューがすごい。
川上村の話、意外と反応ありますね。研修生名目で低賃金労働を強いる暗い実態に関しては、安田浩一『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社) http://t.co/u8bRO7xrm5 を読むとよいと思います。レビューについている1点コメントがある意味この本の価値を示していますね。
— SUGAWARA, Taku (@sugawarataku) 2014, 12月 5
このレビュー書いた人は、こういう読み方をしても、1つ星ということは、「呼び寄せた日本人ではなく、勝手に来た外国人が悪い」、と思っているのだろうから、やっぱり日本には来ない方が彼らの身のためなんじゃないの、と思わざるを得ない。
移民受け入れ問題については、昔の渡来人/帰化人みたいな高度人材に特化すればいんじゃないの、という意見もあるけどね。
しかし、一方で、川上村は日本人の人口4200人に対して、外国人実習生が800人とか、明らかにやりすぎ感があるのも事実。
平均年収2,500万のレタス農家の村、として1~2年前にもてはやされてた時、自分もWikipediaを見に行って、やたら若い男が多いんだなー、と思った記憶があるのだけど、それが外国人実習生によるものだった、と。
以下、再び菅原氏のツイートから。
地方創生の流れのさらに前、文藝春秋で藻谷氏が関わった地方記事で川上村を持ち上げていて、論壇の会議でこれは外国人研修生を使っているのではと指摘・批判したことがある。そのときの根拠は、村の国勢調査人口と住民基本台帳人口が大きく違い、しかもそれが若年男性に集中していることだった。
— SUGAWARA, Taku (@sugawarataku) 2014, 12月 5
メモを見てみると、Wikipediaを見ていて気が付いたらしい。「生産年齢(15-65)人口の男性のうち4割が非登録者、おそらく外国人研修生である。そうすると、こうした統計が示す未来が「明るい農村」(川上村のキャッチフレーズ)かどうかはよくわからない。」
— SUGAWARA, Taku (@sugawarataku) 2014, 12月 5
だんだん思い出してきた。Wikipediaを見て「近年は外国人研修制度を利用するなどして、中国人など外国人も受け入れている。」と書いてあったのだけど、上に載っている国勢調査の人口分布(2005)の形が異常で、受け入れどころか過度に依存しているのだと直感したのだった。
— SUGAWARA, Taku (@sugawarataku) 2014, 12月 5
Wikipedia掲載の川上村の年齢別・性別人口分布(国勢調査2005)。20代30代男性だけ突出している。
http://t.co/GSpt9SjrIq
— SUGAWARA, Taku (@sugawarataku) 2014, 12月 5
レタス長者の長野県川上村 黒すぎる実態がネットで話題に #ldnews http://t.co/fHI1vEHkkF 「「数字で見た川上村 2012」によると、人口は4163人で、農家の戸数は566戸。」「外国人農業実習生の数は810人」
— SUGAWARA, Taku (@sugawarataku) 2014, 12月 5
当時のメモから。「国勢調査を基準とする人口異動調査人口と住基台帳人口(11年)に差があり後者はかなり少ない(5000人弱と4200人弱)。」当時も800人の外国人労働者がいたとすれば、この差がほぼ外国人労働者だったということか。
— SUGAWARA, Taku (@sugawarataku) 2014, 12月 5
川上村についてはメディアに取り上げられたときから、この年収2500万が、年商(売上高)なのか、税務上の農業所得(諸経費を引いた分)なのか、いずれにしろ給与所得者が考える、可処分所得としての年収とは違うだろ、という論点から浮ついたアピールに懐疑的な意見があったのは事実。
個人的には、川上村のレタスをブランド化して高く売りたい生産者か流通業者、あるいは双方に、それなりにハードコアな考えの人がいるんだろーなー、とは思っていたのですが。
肉体労働がキツいわりに収入はたかが知れている。だから、若い働き手が集まらない。そういう現実は農業にはあるんだと思います。それを少しでも若い人に注目してもらいたい、利益率を上げたいからブランド化したい。現場の人は大変なんだろうな、とは思うんです。
とは言え、AO入試のヤラカシ人材で始まってAO入試のヤラカシ人材で終わろうとしている2014年の日本で、「僕はこんなにすごいんです!」「こんなに成功しました!」みたいなアピールを、これからの日本社会はどのように受け入れていくのか。
単に、中身を伴わない人間を批判するだけでなく、我々はどうやって表層の薄っぺらさを見抜き彼らに何ができていて、何ができていなかを見極められるのか、あるいは、アピールしない人物や組織を本当に評価できるのか、といった問題を改めて考える必要があるのではないかと思いました。